時間価値を上げろ!【2024年 利益向上委員会】
待ち時間の改善がお店の評価を決める?(前編)
待ち時間は短縮したいが…
普段の生活の中で、待たされることは日常茶飯事です。
電車の遅延、飲食店の行列、アプリのダウンロード、エレベーターや信号を待つとき、友達との待ち合わせなど、さまざまな場面や状況でたくさんの待ち時間が発生します。
こうした待ち時間を不快に感じた経験がある方も多いのではないでしょうか。
私たちの生活において「待つ」という行為をせずに一日を終えることはない、と言っても過言ではありません。
世の中は「待てない」傾向
何らかの出来事や他人に拘束されて「不本意な時間待ちを強いられる」事態は、ストレスをもたらします。
そして、ストレスの影響は、不安や緊張などとして現れ、不快感を生んでしまいます。
加えて、近年では、インターネットやスマートフォンの普及といった科学技術・情報技術の発展により生活の利便性が増したことで、「待てない」傾向に拍車がかかっています。
現代人は、待つこと自体が苦手になってきており、さまざまな「待つ」場面において、イライラさせられるようになりました。
このようなことから、私たちは、待たされると、肉体的にも精神的にも苦痛を感じやすく、また利便性が向上したことにより、むしろ待てない傾向にあることが分かります。
病院45分、役所15分、飲食店10分でイライラ
では、人は、どのような場面や状況でどの程度待たされるとイライラするのでしょうか。
日常生活のさまざまなシーンでイライラを感じるまでの限界時間を聞いた、最近の調査がありますので、ご紹介したいと思います。
シチズン時計は2018年に、日本全国のビジネスパーソン400人を対象として、「待ち時間」に関するアンケート調査をインターネット上で実施しました。
まず、さまざまな場面・状況で「どのくらい待たされるとイライラしますか?」という質問をしました。その結果の一部を以下に示します。
・病院 約6割の人が45分までが限界
・役所 15分までに約6割がイライラ
・ランチタイムでの飲食店の空席待ち 約7割が10分待ちでイライラ
次に、待つのが当たり前の状況で、「行列して順番を待つとき、待ち時間をどの程度覚悟しますか?」という質問に対しては、
・人気飲食店の入店待ち 過半数が30分まで待つのを覚悟、待っても1時間までが限度
・携帯ショップの順番待ち 15〜30分待つのを覚悟
など
という回答が得られました。
そして、「待ち時間をゼロにできるとしたら、どの時間をなくしたいですか?」という質問では、待ち時間をゼロにしたいものを3つ選んでもらったところ、
第1位は「病院」(55.0%)であり、これに「テーマパークの人気アトラクションの入場待ち」(33.3%)、「外出先でのトイレ待ち」(22.5%)が続きました。
待ち時間への対策が企業・店舗側の評価アップにつながる
シチズン時計による調査結果にも示されていたように、人々の間には、病院の待ち時間を改善してほしい、という意識が強くあります。
予約をしていても、かなりの時間待たされる病院もあります。ましてや、具合が悪い時に待たされるのは避けたいものです。
病院側も、待ち時間の問題を重要視しており、工夫や知恵を出してその対策に取り組んできました。
例えば、千葉県習志野市にある谷津保健病院では、開設以来「待たせない病院」をコンセプトの1つとして掲げ、外来の待ち時間を定期的に調査し、その結果を待ち時間改善の取り組みに役立てています。
病院の待ち時間に関しては、たとえ治療の質が高く満足のいくものだとしても、待ち時間が長くなるほど病院に対する満足度が下がる、という厚生労働省の調査結果があります。
待ち時間に対する評価が、病院全体の評価に影響を及ぼしているといえます。
サービス業では、待ち時間に対する評価がサービス全体の評価に影響を与えることが知られています。
サービス全体の評価においては、顧客満足度は重要な指標です。顧客満足度が高まれば、企業や店舗に対する満足度も高まります。
したがって、待ち時間における顧客満足度の向上が、企業・店舗に対する評価につながることが分かります。
待ち時間の短縮には限界が
上述しましたように、待ち時間に対する評価がサービス全体の評価に影響を及ぼすため、待ち時間に対する評価の向上は、サービス提供者にとって重要な課題となっています。
待ち時間対策の1つとしては、待ち時間を短縮する方法があります。
東京都の板橋区役所では、「待ち時間の短い窓口」を業務改革目標の1つに掲げ、2015年4月の庁舎改築を機に、窓口サービスの向上に取り組んできました。
庁舎の低層階に区民の利用頻度が高い窓口を配置したり、都内初の「受付案内システム」を導入したりした結果、窓口での待ち時間を大幅に短縮することに成功しました。
待ち時間の短縮は、板橋区役所の事例のように作業工程の機械化や、人員の拡大などを進めることで達成可能です。
しかし、それには通常、多くの時間とコストがかかります。このため、企業や店舗側が待ち時間を短縮することは難しいのが現状です。
こうしたことから、待ち時間の対策には、実際の待ち時間を短縮することはできなくても、待ち時間から生み出される不快なストレスを軽減することができる方法が求められています。
(後編に続きます)