時間価値を上げろ!【2024年 利益向上委員会】
Amazonの高速配達
Dashボタン終了に見るビジネススピード
世界的なECの大企業として知られるAmazonは、プライムナウやDashボタンといったシステムを発表し、注文から配達までの時間を少しでも短くしようとしてきました。
その動向は他のEC関連サービスにも波及しており、Amazonが現代の高速配達傾向を牽引している状況です。
なかでも大きな驚きをもって迎えられたのが2015年にAmazonが発表した、「Dashボタン」でした。
Dashボタンは、洗剤や飲料といった特定の商品を注文するための専用ボタンです。商品のロゴがあしらわれた物理的なボタンを自宅で押すと、そこから自動的にAmazonに注文がなされ商品が届く仕組みでした。発表当時、まるで魔法のポケットのようだと思った方も多かったのではないでしょうか?
しかし実はこのDashボタン、2019年2月に新規の販売を終了しています。そこに、この記事のポイントである「ビジネススピードの変化」を見ることができます。
Amazonは、Dashボタン自体の売上は好調だと述べています。つまり、Dashボタンというコンセプトが消費者に受け入れられなかったから撤退する、というわけではないのです。
Dashボタンの販売を終了させるにあたり、Amazonは理由を明言しているわけではありません。しかし技術革新によって注文のあり方が変容し、Dashボタンに代わる手法が台頭してきているからではないか?という見方が有力です。
技術革新による新たな注文方法とは、アレクサと、DRS(Dash Replenishment Service)の2つです。順番にみていきましょう。
まずはアレクサ。アレクサとはAmazonが開発したAIアシスタントで、同社のスマートスピーカーEchoに搭載されている人工知能です。Amazonは、このEchoを用いた注文が、近年増加傾向にあるとしています。確かに、一つ一つ専用のボタンを押すよりも、「アレクサ、水とトイレットペーパーを注文して」と呼びかける方が、スマートかもしれませんね。ちなみに、アレクサを通して注文すると、今までの購入履歴から同じ商品が選ばれて届けられます。
いつも使っている日用品がなくなりそうという時は、おつかいを頼むようにアレクサに呼びかければおなじみの商品が届くというわけで、確かにDashボタンを押すよりも利便性が高い注文方法といえるかもしれません。
アレクサよりもさらに未来を感じさせるのが、DRSです。DRSはネットに接続された状態の家電品が、消耗品が切れそうになるのを感知して自動で注文するというシステムです。注文のためにECサイトを開いたり、スマートスピーカーに呼びかける必要すらありません。米国では2016年から、日本では2018年から運用がスタートしています。
ウォーターサーバーの水が少なくなるとそれを感知して自動で水を注文する、ペットの給餌入れにフードが残り少なくなるとストックを注文する、といった魔法のような動作は、家電品をネットにつなぐことで実現しています。
いわば、Dashボタンが家電品の内部に組み込まれ、呼びかけたりボタンを押すというアクションをしなくても、自動で足りないものを補充してくれるというわけです。
こうした状況を見ると、Dashボタンはその役目を一旦終えて、ECの注文と配達までの流れをさらにスピードアップさせるためバトンを渡したようにも思えます。
Amazonが世界的な優位に立ち続ける以上、世界の産業はより一層スピードの価値を高めていくでしょう。これは日本においても例外ではありません。
IoT家電のバリエーションが豊富になり、ビッグデータやAIを活用してその能力を最大限に引き出せば、「注文」というプロセスすら省略されていきます。DRSのような補充方法が主流になれば、ECを取り巻く状況はさらにシンプルに、そしてスピーディになることでしょう。