時間価値を上げろ!【2024年 利益向上委員会】
待ち時間の改善がお店の評価を決める?(後編)
待ち時間のストレスを減らそう
前編では、待ち時間における顧客満足度の向上が、企業・店舗に対する評価につながることをご説明しました。
また、実際の待ち時間を短縮することは、現状では難しいこともお話ししました。
では、実際の待ち時間を短縮する以外に、待ち時間における顧客満足度を高めるには、どのようにすればよいのでしょうか。
実際の待ち時間よりも、感じた待ち時間の短縮が大事
米国のマーケティング・コンサルタント会社CEOが執筆した、世界的ベストセラー『なぜこの店で買ってしまうのか:ショッピングの科学』(Paco Underhill著、2014年発行の邦訳版、早川書房)は、「あなたがしている腕時計はおそらく正確に時を刻んでいるだろうが、それよりも重要な時計はあなたの頭のなかにある」として、お客さまにとっては、実際の待ち時間の長さよりも、知覚した待ち時間の長さの方が重要であることを示しています。
このことから、待ち時間における顧客満足度を高めるには、お客さまの感じた時間の長さを短縮することが有効だと考えられます。
不快なときは、時間を長く感じる
「楽しい時間はあっという間に感じるが、退屈な時間は長く感じる」
私たちは、日常生活でこのような感覚を体験することがあります。
感じた時間の長さに関する研究では、不快な条件下で評価された時間は、快い条件下で評価された時間よりも有意に長いことが示されています。
不快な状況、すなわち、不快なストレスを感じているときは、時間を長く感じることが分かります。
したがって、待ち時間中の不快なストレスを軽減することができれば、感じた時間の長さが短くなると考えられます。
待ち時間のストレスを軽減する方法
待ち時間において実施可能なストレス軽減方法としては、さまざまな研究において、「待ち時間の提示」「親和」「可視化」という3つが注目されています。
それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
- 方法その1 待ち時間の提示
待ち時間の伝達は、顧客満足度を高めることよりも、不満足度を改善する効果の方が大きいことが示されています。
また、実際に人を待たせて実施した調査では、待ち時間が10分と記載された整理券を渡して待たせた場合は、何も伝えずに待たせた場合よりもストレスが軽減することによって、
時間を短く感じ、店舗の評価が高まることが実証されています。このことから、待ち時間の提示により、ストレスなどの不満足度が改善され、企業や店舗の評価が高まることが分かります。
- 方法その2 親和
広辞苑(第七版、岩波書店)には、「親和」とは、「親しんで相互に仲よくむつみ合うこと。親しみ結びつくこと」とあります。
親和の状態、すなわち、他人と親しく付き合うことがストレスを除くか、または軽減するとのことです。
さらに、親和の状態がストレスに対処する能力の増大を助長することも示されています。実際に人を待たせて実施した調査では、友達とコミュニケーションを取らせながら一緒に待たせた場合は、1人の場合よりもストレスが軽減することによって、時間を短く感じ、店舗の評価が高まることが実証されています。
このように、待ち時間では、誰かと一緒に待つことで、ストレスが減少して時間を短く感じ、時間を短く感じることで、企業や店舗の評価が高まることが分かります。
- 方法その3 可視化
そして、3つ目は「可視化」です。
サービス分野の研究では、不可視領域をあえて可視化することにより、サービスを提供する際に良い影響を与えることができるとされています。
また、別の研究では、車に乗っている際に視覚領域を可視化することで、運転者のストレス軽減の有効性が確認されました。実際に人を待たせて実施した調査では、実際に店舗内のキッチンで調理している様子を撮影した動画を見てもらいながら待たせた場合は、
そうでない場合よりもストレスが軽減することによって、時間を短く感じ、店舗の評価が高まることが実証されています。したがって、待ち時間に、普段見られない部分(不可視領域)を可視化することにより、ストレスが減少し、企業や店舗の評価が高まることが分かります。
さいごに
待ち時間の短縮は簡単ではありません。
ひとたび短縮に成功しても、それ以上の短縮は難しいという限界もあります。
そのような場合、お客さまが待ち時間を長く感じないような工夫が求められます。
今回ご紹介しましたように、待ち時間にストレスを軽減する状況を体感することによって、お客さまは時間を短く感じ、企業や店舗の評価が高まることが分かりました。
待ち時間の不快なストレスを軽減することで結果として、企業や店舗は、集客率と売り上げを伸ばすことが可能です。
とはいえ、待ち時間は、企業や店舗側だけの問題ではないように思えます。待つ側にも、心のゆとりが必要なのではないでしょうか。